エーゲ海周遊(ギリシャ→トルコ) ③:サントリーニ島(前半)
世界で一番美しい夕日、と言われるサントリーニ島。
また、迷路のようなその町並みに惹かれる人も多いだろう。
前回、アテネについて記述。
今回は次の目的地。
町歩きと猫。
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チケット販売機がギリシャ語のため、ほとんど理解できなかった。
港町、ピレウスで朝焼けを迎え、Blue Star Ferry社のフェリーの大きさに驚いた。
6時50分発のフェリーに乗り、次の島を目指す。
オフシーズなのか、乗客はそれほど多くは無い。
ポツポツと人が座り、とても静かな船内だった。
中央に売店があり、コーヒーやパンなどを買うことができる。
イオス島を経由し、サントリーニ島に着く。
空と海を繋いだ橋のような断崖が、私を迎えてくれた。
晩夏とは思えない日差しの強さと、この島での新たな出会いへの期待に、フェリー甲板上から胸が高鳴った。
空は青いし、海は更に青い。編集無しで色が出る。今まで見た海の中で一番青い。
青という色へのボキャブラリーの少なさが不甲斐ない。
海に飛び込み、海になりたいと一瞬思ったが、思っただけで終わった。
港から小型バスで宿まで送別してもらった。
運転席の隣に座った私に、運転手がサントリーニの魅力をガイド顔負けに語っていた。
"Anna Pension"という宿に泊まった。
シャワーの温度と水圧も良く、管理人も親身、かつプールもついて、リーズナブル。
言うことなしの良い宿だった。
ただの道。
宿から徒歩で中心地、フィラを目指す。
人らしく、人並みの速度でゆっくり歩く。
サントリーニ島も観光地以外は、とても静かだ。
日常では意識しないくせに、こういう時に限って、風の音が耳に張り付いてしまう。
風が建物の間を、木々を揺らす。建物は白い。
やけに喉が痛く、唇もパサパサするなと思っていたが、サントリーニでは、風が強く、空気も乾燥している。
昼は焼けるような日差しだが、日が沈み夜になると風が冷たく寒い。そんな9月末の気候だ。
フィラからはサントリーニ各観光地へバスが出ている。
これに乗り、まずはオイアへ。
日本語ガイドブックなどではイアと標記されていることが多いが、現地の人はオイアと発音していた。母音が続く標記にはあまり慣れない日本人だ。
観光地以外は山、海、空。 バス道から見下ろす島。
レンタバイクやレンタカーで島巡りする人達も多数いる。
惜しくも国際免許証を忘れたため、自分のペースで島を回ることが叶わなかった。
オイアのバス停付近。
フェリーから見えた、断崖の上に雪のように積もる白い傘は、全てが白い建物の集まりだった。
これから私は、この白の中を行く。
迷路を解くように、狭い路地の間を沢山の人が歩いていく。
写真では全てが伝わらない、町歩きの楽しさが溢れている。本当に楽しい。
小さな白い建物それぞれが、隠れ家のように店を構えている。
道が分かれると、どちらに行くべきか迷うが、どちらも正解と言える。道が続いている、いないではなく、ハズレの無い景色達が、カメラのシャッターを切らせる。
この建物はトイレ。トイレと言われなければ、絵葉書にも抜擢されそうな美しい景色だ。トイレ利用料は0.5€。
飽きることの無い本当に美しい町歩きだ。楽しい以外の感情が無い時間だった。
いつか、もう少しだけ大人になった時に、またここを訪れたいと思った。
そのときは今より、少しだけ料金の高いホテルに泊まって、少しだけ良い味のするワインを飲みながら、また同じように夕日を見よう。そうすれば、この日のことをまた思い出せるだろうか。
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夕日をじっくりと、眺め続けることは好きだろうか。
黄昏時、日に照らされた世界は刻一刻と色を変えていく。
一時間も経とうものなら、それはもう別の世界だ。
世界一の夕日を見るためにやってきたサントリーニ島、その夕日を私は見ていた。
変化する景色の色を、ただずっと眺め続けながら、夕焼けが悲しい訳を考え、終わるのが悲しいか、始まるのが悲しいか。
もう少し考えてみれば、何が悲しい訳でもなく。
じゃあ一体どんな気持ちなのかと自分に尋ねれば、きっと、切ない気持ちだと答える。胸がザワつくような、そんな気持ち。
世界一だろうが無かろうが、人が夕日を見て、切ない気持ちになる理由は、私はわからない。
しかし事実。気持ちがある時には生きている実感もある。
この日の夕日に限らず、いつの夕日もそうだろうか。
特別な夕日を沢山見る。
私がこの時に決めた、些細な決心の一つだ。
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P.S.
イカリング、グリークサラダ、パン。
ギリシャはパンが美味しい。
ソーセージに蜂蜜和え(?)にきのこリゾット。
日本人の味覚にも合う味付けで、美味しい。
後半へ続く。