淡路島、釣り
午前3時、雲居から覗く夏の星座が霞んでいた。
数人の研究室同期、先輩、研究員の方と共に淡路島目指して車を走らせた。
私自身、釣りをするのは、去年の夏以来。
重たい瞼を閉じたと思い、次に目を開けた時に、目的地に到着していた。
5時頃から12時頃まで、釣り。
釣り竿越しに伝わる一瞬の振動、ブルブルというよりも、ブルッ。
この感覚こそが醍醐味だろうか。
その日は幸いにも、沢山の魚を釣り上げた。キス、サバ、タイ、カワハギ、フグ、など。
惜しくも、タコは逃してしまった。その後、土産屋にて堂々たるタコの丸焼き(1000円強)を目にした時、少しの悔しい気持ちがわいていた。
気付かぬ間に、私の横に寄り添っていた、猫。
海の匂いが染み付いたような、長い髭だ。
私が魚を釣り上げる度、何かを語りかけるように、甲高い声で鳴いた。"ニャー"。
それに感化され、海に逃がすつもりでいたハゼをその猫の目前に置いた、矢先、かぶりついた。
"バリッ、ムシャ。"と潮風を貫く無情な音が、生を思わせる。
少し太った猫は、釣り人達から魚を貰うことを既に覚えていた。
知った慈善をじっと待つその猫の目は、私に確とした印象を残していった。